「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」とは、『美味礼賛』の著者ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの言葉。食べ方にはその人の生き方が現れるから、優れた人格と品格を兼ね備えた「優雅なエピキュリアン」を目指したい。そのために必要なエッセンスを食のオーソリティに学びませんか? 第14回目は、フィレンツェにある世界最古の薬局サンタ・マリア・ノヴェッラ(★1)の自然治癒や予防医学という思想を取り入れたリストランテ「ジャッジョーロ銀座」を訪問。マネージャー・佐藤 聡さんに“体をメンテナンスする食事”について伺いました。
Presented by
美容食スペシャリスト
飯野 耀子
Iino Youko
イタリア版“医食同源”のオーソリティ
ジャッジョーロ銀座 マネージャー 佐藤 聡氏
ビバリーヒルズでハリウッドセレブを虜にし、2002年海外初姉妹店としてオープンしたカリフォルニアキュイジーヌレストラン「MAKO RESTAURANT TOKYO」でサービスのキャリアを本格スタート。3年目に株式会社ヤマノ アンド アソシエイツ代表にスカウトされる。約2年間のマーケティング業務を経て、2007年、ジャッジョーロ銀座オープンと同時にマネージャーに就任。
―「ジャッジョーロ銀座」さんは料理研究家の馬場香織先生ファミリー(★2)に紹介されて、一度伺ってから本当にファンだったのでこの連載に出ていただけてほんとに光栄です。
こちらこそ、ありがとうございます。馬場様には開店当時からご家族皆様でいらっしゃっていただいていて、こうやってお客さまもご紹介いただき感謝しております。
―私も何人かお友達にご紹介しましたが、とても喜んでくれるお店なんですね。特にキャリアを持っているお友達が多いのでみんな、疲れた体にオアシスといった感じみたいです。
ありがとうございます。サンタ・マリア・ノヴェッラの思想を取り入れたリストランテとしては、2004年、フィレンツェと姉妹都市にあたる京都にオープンしたリストランテ併設ショップ「サンタ・マリア・ノヴェッラ・ティサネリーア京都」(★3)があるのですが、独立したリストランテとしてお食事が楽しめるのは「ジャッジョーロ銀座」が初めてになります。
―素敵なコンセプトですよね。最初はサンタ・マリア・ノヴェッラとイタリアンがどうコラボレーションするのか?伺ってみるまでまったく予想がつかなかったんですけど、定番のハーブサラダを食べた瞬間に、お店全体を感じたといいますか、コンセプトを体が解った感じがしました。
ありがとうございます。私どもとしてはお客様が体のケアをするといった感覚で料理を食べに来ていただけたらと思っているんですよ。体のメンテナンスを体に良く、美味しい食事でといった形で。
「チェーリ」のリトグラフと額。チェーリ家は1300年代にメディチ家おかかえのキャンドル職人の家として始まり、現在は1500年代から1900年代のオリジナル・リトグラフ・コレクションとそれを飾る額の販売を行う。
店内にはサンタ・マリア・ノヴェッラの製品もディスプレイされている。
―解ります。お料理だけでなく、サービスの方達の気遣いやお店の雰囲気にも癒されます、いつも。ところで入口に続く階段を下りていくと、お香の香りがふわっとしますが、なぜお香……?
京都の松栄堂さんのお香とポプリをミックスして焚いているんです。店の設計は京都店と同様、茶室も手がけておられる京都嵐山の才門俊文建築設計事務所にお願いしました。日本の伝統を随所に取り入れ、日本人が落ち着いて食事が出来る空間を心がけています。
―あぁ、なるほど。京都とフィレンツェというコラボをそういった形で表現されているんですね。確かこちらはそういった意味ではサンタ・マリア・ノヴェッラ以外にもフィレンツェとご縁のあるものをいろいろと扱われているんですよね?
サンタ・マリア・ノヴェッラは、歴史と伝統を頑なに守る創業100年以上の企業に限られた老舗協会のメンバーとして名を連ねているのですが、同じ協会に所属する老舗「チェーリ」のリトグラフと額をフィレンツェから取り寄せて使用しています。
―素敵ですねぇ。そんな空間で、美味しい上に体にいいお食事をいただける贅沢!
ありがとうございます。
―「自然治癒と予防医学の思想を取り入れたリストランテ」って聞くと、何だか構えちゃいますけど、肩の力を抜いて楽しめる素敵なお店ですよね。「美味しいトスカーナ料理(★4)を食べに行きましょう」とお友達を誘って、実は体にいいのよ、っていうサプライズがあるというのもいいかもしれませんね。
実は私どもは比較的、お医者様にたくさんお越しいただくんですよ。製薬会社の皆さまにご利用いただくことも多くてですね、普段、みなさんを健康にする側のお仕事の方がいらしてくださるという面白い御縁もいただいております。
―ところで“イタリア薬膳”と表現されるなど一見、とてもストイックなお食事が出てくるイメージを持ってらっしゃる方も多いかと思いますが……?
はい、「健康に気遣う食事」となると、ついストイックなイメージや食材になりがちだと思うのですが……私どもでは、自然治癒と予防医学の概念から免疫力の高い状態を食事で保つというコンセプトの上に「決してストイックな食事にはしたくない」ということも大切にしているんです。
―それは塩分調整などを気にしなければならない方にとっては特にうれしいことですね。
はい、我慢ではなくて、その方にとっての「美味しい」を最大限、ルールのある中でご提供するというのが私どもの仕事だと思うんですね。そういう意味でどんな方でも体のことを気にせず食事を楽しめるようなお店にしたいですね。
―具体的にはどのようなお料理を心がけていらっしゃるのですか?
トスカーナ料理を基本にハーブやその薬効が期待される食品などを使用して、素材にストレスを与えないシンプルな調理法で提供しています。
―ハーブサラダはもちろんですが、他のお料理でもハーブが添え物じゃないんですよね。ハーブサラダを初めていただいたときはびっくりしましたもの。十数種類のハーブが山盛り!
ディルやチャービル、イタリアンパセリ、オレガノ、ルッコラなどのハーブ15種類と、壬生菜、水菜などの葉野菜をバルサミコベースのオリジナルドレッシングで和えています。来店されるたびに必ずオーダーされる方が多いですね。
―ハーブは国産ですか?
はい、ハーブは茨城の契約農家から取り寄せたものですし、肉、魚、野菜をはじめすべての食材は、鮮度や産地、栽培法にこだわった安全性の高いものをセレクトしています。医食同源(★5)のコンセプトを日本の食材で表現していきたいと考えているんです。
オレガノ、マジョラム、タイムなどのハーブと季節の野菜に少量の水を加えて炊いて仕上げた「天然真鯛のハーブ蒸し ジャッジョーロ風」。味付けは塩とオリーブオイルのみ。スープも味わい深い。
「ジャッジョーロ名物 ハーブサラダ」。途中で味が変えられるようにパルミジャーノ・レッジャーノ、オリーブオイルと赤ワインビネガーを混ぜたソース、ブルーベリーが添えて出される。
―本当にこのハーブサラダを頂くと自分が浄化される気分になるというか、血がきれいになる気がするというか(笑)ハーブの香りと風味をしっかり堪能できるサラダはもちろん、味付けもやさしいお料理で体の中からキレイになる気がします。
「疲れない食事」とお褒めいただいたこともありますね。外食続きの方には重宝いただいています。
―ホッとする味なんでしょうね。
そう感じていただけたらこれほど嬉しいことはありませんね。腎臓の気になる方には塩抜きのお料理をお出しすることもあります。ご希望にあわせてメニューにないお料理を作ることも結構ありますよ。私どもは室礼などについてはある意味、緊張感のあるお店かもしれませんが、サービスはあくまでもアットホームに。お客様にとって心穏やかになる場所にしていきたいですね。せっかく来ていただくのですから、ご遠慮なくいろんなリクエストをしていただけたらと思います。できればご予約時にお願いできればと思いますが、リクエストがあればあるほど、嬉しいと思っているんです。
―今年オープン3年目を迎えられますね。今後の展望を教えていただけますか?
今まで通り、ハーブの力を次の日に実感していただけるお料理を提供していきたいです。ハーブを通して健康を提案し続けることで、“ハーブのレストランといえば「ジャッジョーロ銀座」”というくらいの立ち位置になりたいと思いますね。
―なるほど。
ですからジャッジョーロのスタイルだけでなく、例えば、ハーブティやハーブのリキュールを飲む習慣って、日本ではまだ浸透しきっていないですよね。食後にハーブティやリキュールを飲むと、胃がすっきりするんですよ。今後の展開の中で、街のコーヒー感覚でハーブティを召し上がっていただけるような、そんな業態ができたらいいですね。
―ぜひ作ってください! 楽しみにしています♪
それから “体をメンテナンスするための外食”という分野をもっと広げたいと考えています。これは私の個人的な意見になるかもしれませんが、プロが作った食事を食べて疲れるというのは何かが違う気がしてならないんですよ。プロが作るからこそ体に優しくあるべきなんじゃないかと。
―確かにそれは一理ありますね。これからの時代は恐らくレストランという言葉の意味(★6)の原点に返るような食事というのがより求められるようになると思いますね。そういった意味ではこちらのお店はバランスがいいという点において、さきがけと云えるお店なのではないでしょうか?
ありがとうございます。来店された翌日、お客様から「調子が良くなった」というメールをいただくこともあり、とても嬉しいですね。これからも食べるほどに元気になる料理を雰囲気のよい空間で提供していきたいと思っています。
―これからもまた利用させていただきます。本日はありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
初代薬局長フラ・アンジョロ・マルキッシの処方が現代に受け継がれる、バラやオレンジ、スパイスやハーブを用いたリキュール
メディチ家のワイン「ヴィッラ・アルティミーノ」が飲めるのは東京では「ジャッジョーロ銀座」だけ。グラスでもオーダー可能。
「ジャッジョーロ銀座」のオーナーである山野エミール氏は男子学生が目指すべき人が減ったといわれる現代にあって数多くの若者に“憧れられる”数少ない存在。その山野氏が京都とフィレンツェという共に文化背景の深い地を結ぶことから始まったサンタ・マリア・ノヴェッラの思想を食せるレストラン。その空間に癒される贅沢を知ることが出来るか否かは、本物に触れて大人になれるかどうかの違いと同じような影響を“品格形成”に及ぼすのではないでしょうか? また、もしこの贅沢を享受できている自分を見出せたなら、その自分には何か一つご褒美をしてもいい、そんな場所に出会えたような気がします。
★1 イタリア・フィレンツェで1221年から続く世界最古の薬局。ドミニコ会の修道士たちがハーブの薬効や香りの効能を処方として癒やしの治療を行い、病める人々を救済していたことに端を発する。薬草、香料など当時の医学と深く関わりを持っていたメディチ家の加護の下、名品を作り続けた。天然のハーブを使用した製品は「癒しの芸術」と称され、代々継承されるレシピを基に、今もその多くを手作業で製造している。
www.santamarianovella.jp
★2 料理研究家。自らの海外経験及び子育て経験を踏まえ20年以上に渡り、料理研究家として活躍。またテーブルコーディネーターとしても毎年東京ドームで行われる「テーブルウェア・フェスティバル」に連続入賞しつづけるなど、そのセンスの良さには定評がある。近著『何度でも作りたくなるほめられレシピ』(角川・エス・エス・コミュニケーションズ)はお嫁入りには欠かせない一冊として人気に。また実父であるアサヒビール名誉顧問・中條高徳氏と愛娘景子さんの書簡が書籍化された『孫からの質問状 おじいちゃん 戦争のことを教えて』『孫からの質問状 おじいちゃん 日本のことを教えて』(共に致知出版)は小学校などで推薦図書になるなど戦争を知らない世代に自国の歴史を伝えるベストセラーとして高い評価を得ている。
★3 自然治癒、予防医学というコンセプトに基づくライフスタイルの提案の場、それが「サンタ・マリア・ノヴェッラ・ティサネリア」。サンタ・マリア・ノヴェッラのハーブティーや食品などを扱う。2009年6月現在、京都、名古屋、銀座で展開。
www.santamarianovella.jp
★4 イタリア半島北部に位置するトスカーナ州(州都はフィレンツェ)の料理で、メディチ家を中心とする華やかな貴族の食文化と農民の食生活が融合しているのが特徴。素材の味を大切にし、州の特産物でもあるトマトとオリーブが味の決め手となる。なお、トスカーナ地方は赤ワインの代名詞に近いキャンティの産地としても有名。
★5 バランスのとれた食事により、病気を予防・治療するという考え方。中国の薬食同源思想(健康を保つ上で薬は日々の食事と同様に大切であり、おいしく食べることは薬と同じく心身を健やかにするという教え)からヒントを得て日本で広まった造語である。
★6 フランス語の「restaurant(レストラン)」はラテン語で「良好な状態にする」といった意味の「instauro」 と「良い状態にする」「回復する」といった意味の「restauro」に由来。「回復させるところ」を意味する「restaurant(レストラン)」という語が生まれた。
フィレンツェにある世界最古の薬局サンタ・マリア・ノヴェッラの自然治癒や予防医学という思想を取り入れたリストランテ。トスカーナ料理を基本に、ハーブやその薬効が期待される食品などを使用し、健康維持や美容などに働きかけるメニューが揃っている。店名はフィレンツェのシンボルの花である“アイリスの花”の愛称が由来。
- TEL 03-5537-2233
- 東京都中央区銀座7-10-5 デュープレックス銀座タワー7/10 B1F
- 営業時間/ランチ12:00~14:30(13:30LO)※月〜土。土曜はアラカルトメニューのみ
ディナー18:00~22:30(21:00LO)
- 定休日/日曜
- アクセス/地下鉄銀座駅より徒歩5分、地下鉄新橋駅徒歩8分
- 平均予算/¥10,000
※サービス料10%
- www.giaggiolo.jp/
AllAbout食育ガイド/ myfood.jpチーフエディター。健康管理士、薬膳料理指導員、食育指導士など多数の資格をもち、西洋医学、東洋医学、植物療法の観点から食の効能についての情報を組み合わせ、商品開発、店舗展開に多数参画。2005年よりAll About食育ガイドとして活動。発芽玄米普及大使も務め、FANCL発芽玄米粥の監修も務める。最新の著書に『夜トマトダイエット』(ぶんか社)『合格への食卓』(扶桑社)がある。
公式ホームページ http://www.tablebongout.com/
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