Graceful epicurean 美食の品格
            vol.3 ヌーベルシノワの父に美食同源を学ぶ
            presented by 美容食スペシャリスト 飯野耀子

「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」とは、『美味礼賛』の著者ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの言葉。食べ方にはその人の生き方が現れるから、優れた人格と品格を兼ね備えた「優雅なエピキュリアン」を目指したい。そのために必要なエッセンスを食のオーソリティに学びませんか? 第三回目は、ヌーベルシノワ(★1)の父として世界中から愛される香港料理随一の名シェフ・周中氏に「美食同源」のエッセンスを学びます。

ヌーベルシノワのオーソリティ 周中氏

香港料理界の第一人者。16歳より広東料理の修業を始め、香港の名門店「麒麟金閣」の料理長を経て、1986年HYATT REGENCY HONG KONG「凱悦軒」元料理長・極東地区総料理長に就任。伝統的な広東料理をベースに西洋のスタイルを取り入れた革新的な料理で「ヌーベルシノワの父」と呼ばれ、人気を博しています。『完全なる料理の鉄人』の出演など、日本の数々のテレビ番組にも出演。日本では「restaurant chinois 周中菜房 白金亭」のグランドシェフとして全メニューを監修しています。

周中氏
世界を駆けるシェフ MGMグランド・マカオ(美高梅金殿)(☆2)の総料理長に就任して約1年。
                現在は、東京、香港、マカオの3拠点でご活躍ですね。さぞかしお忙しいでしょう?

「白金亭」では、メニュー提案や厨房の人たちへの指導などのプロデュース業が中心だからそれほど大変じゃないよ。それに僕は日本が大好きだからね。僕の香港のお店には日本のお客さんがたくさん来てくれるし、仲のいい日本の中華のシェフも大勢いるんだ。「MGMグランド・マカオ(美高梅金殿)」でもプロデュースの仕事が中心だよ。香港にいる時は、週の内、2日がマカオでの仕事、2日がテレビの仕事、そしてそれ以外の日にプライベートレストラン「周菜」(★3)を開くといったスケジュールで動いているんだ。

「周菜」は一日数組しか入れないという私房菜(プライベートキッチン)ですね。
                そこに行けば周中さんが作ったお料理がいただけるのですよね?

うん、そこでは調理も全部僕が担当しているよ。ちなみに「周菜」で出した料理のいくつかは「白金亭」のメニューにもさまざまなかたちで取り入れているんだ。

非常に人気と伺っていますが、予約はとれますか?

予約はFAXで受け付けていて、スケジュールが合えばもちろんOK。年内はカナダとNYで講演会を控えていて予約が取りづらいかな? でも、ぜひいらしてくださいね。

「白金亭」とのお仕事で以前よりも日本に滞在する時間が長くなったと思いますが何か影響を受けたことはありますか?

そう願っているんだけど、実はまだあんまりないんだよ。というのも、日本は香港に比べて新鮮な食材が少ないから。

えっ? 「日本は食材が少ない」ですか? 僕たちが気軽にいける市場が東京には少ない、といった方が正しいかな。香港やアメリカでは、食材を直接手にとって様子を見たり、味見できたりするものが多いけど、日本のスーパーでそういうスタイルを採用していないでしょう?直接触れてみないと、なかなかインスピレーションを得るところまでいかないんだよ。だからそういう機会があったらいいなといつも思ってるよ。
restaurant chinois 周中菜房 白金亭
周中氏がグランドシェフを務める「restaurant chinois 周中菜房 白金亭」
ヌーベルシノワが生まれたきっかけ ヌーベルシノワの父として新しいスタイルの広東料理を提案されていますがそもそもなぜ新しい中華を提案しようと思ったのですか?

いや、新しい中華を提案したいと思っていたのではなくて、お客様によってお料理の出し方にアレンジを加えていたら、主に若い人向けに作ったフュージョンスタイルの料理が増えて、気がついたら「ヌーベルシノワの周さん」ってことになったんだ(笑)実は僕の料理の中には昔ながらの中華もたくさんあるんだよ。

なるほど。料理のアレンジはどうやって決めていたんですか? 「あぁ、あの人はオーソドックスな中華がよさそうだなぁ」とか「この人は若いからフュージョンのアレンジを加えた方がいいかなぁ」とかお客様の顔や雰囲気を見て決めただけさ。
「あの人はお金持ちそうだなぁ」と思ったら高い食材オンパレードも(笑)? あはは、まさかそれはないよ(笑)だって料理を作る前に僕がわかるのはお客様の表情や服装だけ。お金持ちかどうかは解らないもの!
もちろん冗談ですよ(笑)
「パパイヤフカヒレ蒸しスープ」
周氏を世界的に有名にしたスペシャリテ「パパイヤフカヒレ蒸しスープ」
美を育む食生活とは さて、中国には医食同源という考え方がありますよね。周さんのお料理にはどう取り入れられていますか?

中国人は特に秋冬にその理論を用いる傾向があるかな。スープに漢方薬を入れたりね。ただ漢方料理は苦いこともあるから、日本の人はあまり好きじゃないでしょう? だから日本人向けには漢方薬を少しだけ入れるくらいかな。

なるほど。ちなみに、私は周さんのお料理に「美食同源」という考え方を要所要所で見出すのですが、特に女性の美を意識したメニュー作りはされていますか?

いい食材といいプレゼンテーションを意識しています。そこでひとつ提案があるんだけどそれらをより効果的にするためには、皆さんに食事を目と舌で楽しむようにして欲しいんだ。これは食事できれいになるためにとっても大事なことだよ。
それから、美食同源という意味では、春は比較的お肉を多めに食べても大丈夫な季節だけど、夏は野菜をたくさん食べてお肉は少なめにすることが大事。女性は年間を通じて魚を食べるといいね。特に魚は内臓類ではなくて背中の部分なんかがおすすめだ。あとは一年を通じて野菜、それから果物をたくさん食べるのがいいね。

ふむふむ、面白いですね。他に美しさに繋がる食生活のアドバイスはありますか? 「清淡」(薄味)「少肉多果」(肉類は少なく、野菜、果物を多く)「少油少塩」(油や塩分を控えめに)の三原則だね。これを守れば腎臓の働きが良くなるから肌はきれいになるし、体もすっきり、無駄なお肉がつかないようになるよ。
何か特別な食材を食べないとダメということではないのがいいですね。
                    最後に日本のお客様にメッセージを。 僕の料理はちょっとずついろんなものが食べられるようにメニュー構成をしているので、ぜひ「少食多餐」を楽しんで欲しい。これは、一回の食事でも、一日の食事においても同じことが云えるんだけど、食事回数は一日4回くらいがいいよ。僕も実践してるからね。“ちょっとずつ、いろいろ”が大切なんだ。
周氏の料理
「さまざまな料理を少しずつ」のスタイルも周さんがヌーベルシノワの父と呼ばれる由縁。「上海蟹と秋の味覚スペシャルディナーコース」から「上海蟹の甲羅詰め焼き(上)」と「ガダイフで捲いた牡蠣の揚物 ざくろソース(下)」(★4
今回の品格セオリー
「新しいものを作ろうと思った」のではなく「ゲストの希望をくみ取ることで新しいスタイルが生まれた」という周さんのお話は、シェフの主張ではなく、ホスピタリティが成功に繋がった素敵なエピソードですね。また、美しくなる秘訣として、高級食材の羅列ではなく、私たちが普段の生活に簡単に取り入れられる理論を教えてくださったところに世界的に有名なシェフの器の大きさを感じました。東洋医学では、人間は「気・血・水」の3つから成り立ち、「気(エネルギーや運気など)」の巡りや充実を食生活から得ることで健康になれると考えられています。今回教えてもらった「清淡」を心がけた食生活は、体の調子を良くすると同時に、気の流れもスムーズに、人生の滞りもすっきりとさせる秘訣かもしれませんよ。
Food Pedia

★1  ヌーベルシノワは、当時、香港ハイアットリージェンシー「凱悦軒(ガイエツケン)」総料理長を務めていた周氏が火付け役となり、1980年代から始まった新しいスタイルの中国料理。銘々皿で幾皿も出すスタイルと美しい盛りつけ、ヘルシーな調理法が特徴とされています。

★2  ラスベガスで最も有名なカジノ・リゾート、MGMが2007年12月マカオに開業したホテル。35階建ての豪華絢爛なホテルで、総客室は600室。龍が舞う天空の世界をイメージした高級中華料理店の総監督を周氏が務め、定番料理の他、地元産の素材を料理を提供しています。

★3  周シェフが自宅に少人数を招いてコース料理を提供するプライベートレストラン。セレブリティにも愛されており、なかなか予約が取れないことで有名です。(予約の際に飯野さんのAlluxeの記事を見たと書いてみてください)
『周菜(シュウサイ)』
住所:香港 上環 文或西街 27-29号
電話:2805-1116
FAX:2805-1117

★4  ざくろは「フルーツの宝石」と言われ、3種類ものポリフェノール、ビタミンC、ビタミンK、カリウム、繊維質など女性に嬉しい栄養分が含まれていることで人気です。11月はカリフォルニアざくろ「ワンダフル種」が最盛期を迎える時期なので、美容と健康のためにぜひ取り入れてみて。
カリフォルニアざくろ協会 www.pomegranates.jp

A Taste of Elegance

restaurant chinois
周中菜房 白金亭

restaurant chinois 周中菜房 白金亭

香港料理随一の名シェフとして名高い周中氏の料理を日本で唯一楽しめるレストラン。周シェフが生み出す、伝統的な広東料理の中に西洋の食文化を取り入れた新しい中国料理を堪能できます。洗練されたインテリアと伊東深水画伯の風景画に彩られた贅沢な空間は接待にも最適です。

  • TEL:03-3280-1237
  • 東京都港区白金台 4-19-13
  • 営業時間/11:30 ~ 15:00(14:00LO)、17:30 ~ 22:00(21:00LO)
  • 定休日/火曜(祝日の場合は営業)
  • 席数/54席(個室 3室)
  • アクセス/東京メトロ南北線、都営三田線白金台駅1番出口より徒歩2分
  • 平均予算/昼:¥3,234~、夜:¥9,702~
  • 備考/サービス料10%、個室あり、禁煙席あり、お子様連れOK
  • www.shirokanetei.com/
飯野耀子プロフィール
AllAbout食育ガイド/ myfood.jpチーフエディター。健康管理士、薬膳料理指導員、食育指導士など多数の資格をもち、西洋医学、東洋医学、植物療法の観点から食の効能についての情報を組み合わせ、商品開発、店舗展開に多数参画。2005年よりAll About食育ガイドとして活動。発芽玄米普及大使も務め、FANCL発芽玄米粥の監修も務める。最新の著書に『合格への食卓』(扶桑社)、監修本に『いつだって枝豆』(青春出版社)がある。
公式ホームページ http://www.tablebongout.com/
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